「なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか (ハヤカワ文庫NF) (*amazonリンク) 」
心理学の本でした。人が宗教に目覚めたりする理由も同根ではないかと結論づけられているこの本、なかなか人間理解や対人関係について考えさせられるものがあります。
脳が発達して唯一論理的に文化を築いているように見える人間、でも脳の中はコンピューターではなく、いろんな事が起こりうるのだという事実だけははっきり読み取っていいかとは思いました。
それがその人にとって起こった事実だと記憶されているのなら、その人にとっては何より真実でしょう、みたいな。
手に取ってみる価値はあると思います。
近代の日本人は良く微笑んでいたらしい。礼儀作法としての微笑み-外国人には奇妙に見えたらしい-を良く分析してあり興味深い。
自己抑制としての微笑みの美徳、もはや現代でほとんど忘れられた習慣について改めて知ることが出来る良い文章だった。
メディアで軽く引き合いに出ていたので手に取ってみた。京大で文学を学ぶ学生が召集され、海軍でパイロットとして育成されるところから始まる日記形式の小説。
はだしのげんから硫黄島からの手紙までいろいろ日本軍ものにふれてきたが、リアリティがダントツですごく、当時の世界観に引き込まれた。当時の世相、軍隊内の様子等が、学生グループの各個人の視点から描かれ、仮想追体験としてすごく体験できる。
これだから読み物独特の、読者の想像力に任せるというやり方は素晴らしいと思わせられた一冊。例えば映画にしたところで、相当な作りをしなければ伝わらないと思う。
儒学者として徳川家宣に仕え、貧しい時代からやがて中枢で政治を動かしていき、やがて家宣没後市井に帰っていく新井白石の生涯を描いた歴史小説。
読み進めることでタイトルの意味が分かる。学問をそれだけで終わらせず、実際の政治に生かす姿勢、正論を押し進める強力な弁舌の人だったらしく、政敵との争いが物語の中核となる。
本作と同様の伝記的作品「一茶」でも最晩年までを描いてあり、老いと共に友人・仲間・政敵ですら失われていく寂しさが共通して描かれているが、本作では白石のつきない探求心で締めくくられ、今の自分としては突き詰めていく事へのメッセージとして受け取りたい。
ところで奸臣として描かれていた勘定奉行・荻原重秀に関しては、次のような本もあるらしい。
『勘定奉行 荻原重秀の生涯 ― 新井白石が嫉妬した天才経済官僚』
「本書を仮に藤沢周平が読んだとしたら、白石を主人公とした歴史小説『市塵』ははたして陽の目を浴びたであろうか。それほどまでに著者の研究は用意周到で、専門の歴史家も顔色を変えるほどまでに、調べ上げたものかなと驚嘆する。」
このように締めくくられており、やはり歴史は過去、真相は分からないのであり、それぞれの著者の捉え方・スタンスこそ読むべきものかもしれない。
幕末の活動家、清川八郎の物語。学問と剣を修めて塾まで開き、破天荒さはあるものの本来安定志向の人物像、活動に駆り立てられる政情…時勢なども含めて濃く描かれていて興味深い。
あとほとんどサイドストーリーだが、結果として新撰組の母体を形成する過程など食い入ってしまった。史実に基づいているので、こういうところも面白い。
大将・乃木希典を描いているが、描き方がかなり屈折している。まず「軍人としては無能」であり、作者は乃木ファンではないという前提で始まる。こういういわれ方をしなければならない人物だとは知らなかったが、旅順攻略での無能ぶりは差し引いても大体当たっているのだろう。
無能を改善するのではなく、自責からの自殺志願に走っていたらしい。激戦で忙しいさなか自殺的行動に出ようとして、制止のためさんざん部下たちに迷惑をかけるなど。
あと、「陽明学」が常識外の純粋行動を促す、ある意味危険な思想だったと紹介されていて、語感のイメージとずいぶん違うことを、恥ずかしながら知らなかった。結果は問題でなく、プロセスの美しさのみを追求するという…愚かすぎると思うのだが、そういう破滅的考え方に美しさを見いだすのだろうか…。
江戸時代の町民・武家のくらしを描いた短編集で、どれも外れ無し。一番藤沢周平っぽいのは最後の「切腹」、読後感はこれを含めて総じてほろ苦い爽やかな結末。解説に「人を見る確かな目と、絶大なヒューマニズムが深い感動を与える」とあり、確かにその通り。
江戸時代の武家に生まれたある世代の一生を追った物語で、仲間との関係や家の浮沈・藩内抗争を巡るドラマ。
藤沢周平をいくつか読んだ中で今のところ一番ハマった。区切り毎に読後感があり、かつ次を期待させられる構成がすごくて、また内容も江戸時代の武家の様子を仮想体験できる。映画とNHKで映像化されたらしいが、特にNHKの方がよいらしい。
大傑作。
ものすごくよく構成された時代小説長編なのに、短編としても完結していて、藤沢周平の「蝉しぐれ」に近い読後感。ただ、読み初めて、一巻が終わるのにすごく時間がかかった。つかみが悪いのだ。
宮部みゆきは一番好きな作家だったのに、最近読まなかった。「RPG」で失望し、それから短編を見かけなくなったから足が遠くなったのだけど、思えばつかみが悪い作品が多いように思える。ある程度読まないと面白くなってこないから、忙殺の日々で忘れてしまう。
この小説は、はじめの一話を終えると自然加速した。話が一つ一つ面白いし、登場人物が魅力的。宮部節健在で、人情がうれしい。
高校時代に割と読んでいた筒井康隆、ファンのサイトでこの作品の評価が高いので読んでみた。
中盤が丸ごと架空の歴史に割かれていたり、実験的で彼の要素満載、しかもすごく濃い。
確かにあの人でしか書き得ない小説と思うが、それがあまりにストレートで、読者に挑んでいるような感じ。
ナンセンスの度合いも強いので好みではなかった。一つ残念なのは当時の世相を反映した逸脱が、風化して通用しなくなっている。筒井康隆でもそういうことがあるのか。
やはり「旅のラゴス」-彼の要素のうち美しいものを中心に楽しめる-が自分にとっては最高傑作かな。
俳諧師・小林一茶の一生を赤裸々につづった小説で、現代で言えば独立系アーティスト/アスリートに相当する生き方に近いように思う。当時、前句付けという遊びが賭け事になるくらい流行ったようで、実家を追い出されるように奉公に出た一茶が、奉公先を転々とし、ついには賭けに身を投じるまで落ちてから、徐々に認められて行くところから始まる。
江戸で認められるべく奔走する様子が描かれ、パトロンを求めて旅三昧・旅先での無心の日々、徐々に老いていく様が身につまされて痛々しい。実家での財産分与・その後の不幸など自分だったらどうする的なことばかりで、アーティストとして生計を立てる生き方の難しさが痛い。
個人的には、老いて更に色々あったものの、幸せな人生を送れた人ではないかと思う。義母の辛さをなじって生きていたようだが、独立して切り開いた人生の価値は計り知れない。より安定した暮らしが出来る現在でも、そちらにはなかなか踏み込めるものではない。
(以上、2007年1月中に読了)
天下統一前後の、土佐の長宗我部家の物語。多分あまり有名ではない長宗我部家が、そこでみているような臨場感で描かれていて、一族の人々の爽やかさが心地よい作品。また、戦国時代の様子も良く解説されていて、当時の人々の驚くほど狭い地域感覚、天下統一で広がっていく様子なども楽しめた。非常に満足感の高い読後感。
登場人物が限りなく魅力的、もしも娘が出来たならば、付けたい名前は決まった^^;。
(以上、2007年1月中に読了)
やっぱ男の子はチャンバラだよ、みたいな男子向け歴史小説。宮本武蔵だけでなく、近い時代の剣豪について興味深い話が次々と書かれていて、萌えたり、えっ?と思ったり、うわっとのけぞったり…。剣客という芸人的な生き方、司馬遼太郎の視点がすごくて、どれも興味深く読み進んでしまう。
・宮本武蔵 - この人実は勝負に乗るか逃げるか「みきり」がすごいだけ?
・京都の吉岡憲法家 - 武蔵側の書物では彼に惨殺されていることになっているが…
・千葉周作 - 経営上手でもあった人
・おだやかさま - 道を求める生き方に潜在する狂気
・銘刀"一両筒"をめぐって
・奇妙な剣客 - バスク人ユイズ、あこがれの日本へ…
誰かに会えるとしても、武蔵にだけは会いたくない。だって…風呂入らないから相当くさいらしい…
(以上、2006年12月中に読了)
「ハゲ・デブ殺人事件」つか こうへい
はじめの7割くらいはドタバタ、このままスラップスティックで終わるかと思われたところで、複線の物語が始まり、ここから本当の話が始まる。手慣れたブルースマンがロングトーンで引っ張って最後に決めフレーズみたいな。内容的には学生運動の闘争が実は中心の話で、この時代を知らない自分には非常に刺激的で面白かった。
つかこうへいはシャイな人なのかもしれない。ラストはお笑い。非常に面白かったので、この人も掘り下げてみたい。

つかみ良し、最後に共に旅する人物を一人一人登場させ、中盤から怒濤のごとくテーマをたたみかけていく強烈な作品だった。テーマに関する部分への妥協のなさ、決して予定調和という虚構に持ち込まない辺りがすごくて、定期的に読んでおきたい作品。たぶん、読者は登場人物にそれぞれ自分と同じ部分を見つけ、それがどうなってしまうのか最後まで見ずにはいられないと思う。そういう意味では何だか占いでもしているような気分でもあった。自分はどうかというと、大津以外にはどれも当てはまるかも。大津的なお節介もときどきやってしまうが、あれほど無私にはなれない。
ともかくストーリーやテーマが深く、すげぇ…の一言。遠藤最高、深いです。
司馬遼太郎といえば歴史物、この短編集は歴史の裏舞台に普通紹介されないエピソード、英雄になったりなり損なったりした人物が描かれていて、すごく面白い。中でも巻頭の幕末の話で、長岡藩に現れた男の個性がすごい。我が道の生き方がすごいのと、この時代の方がある意味変人には自由だったのかもしれない背景、その後のストーリー、どれも(自分には)新しくて良い。
司馬遼太郎はそんなに好きな作家ではなかったけど、この語り口の作品はすごくいい。こんな日本史を習いたかった。
遠藤周作には珍しい、時代物で、秀吉に仕えた加藤清正、大西の確執を描いた作品。遠藤周作らしい語り口なので、時代物の読みにくさはなく、面白くて万人にお勧め出来ると思う。当時は思った以上にキリシタンが居たようで、この辺りに焦点を当てているのも遠藤らしい切り口で新鮮だった。
「この世においては、よろず変転きわまりなく、止まるものひとつもなきものと存じ候ゆえ」
大西の生涯を通してこの言葉の重みが伝わるのが、この作品の大きな一つの価値だと思う。
ある病院に勤務する女医を中心に、現代人の空虚さを描いた作品。正直こういう心の動きが自分にないとは言わない。みんなそうだと思う。それが極端な人、つねにそういられて、それが悲しいとすら思っている人が引き起こす表には出ない事件にひき込まれた。
遠藤周作なので、ここでキリスト教的概念が出てきて、その方面からの見方がすごくまた面白くて、この視点だからここまで盛り上がるのではないかと思う。仏教的な視点だとあり得ないかも。
ホラー的でもあるけど、読み終わっても気分が悪くなるという感じでもなく、多分多くの人に興味深く受け取ってもらえると思う。久々に止まらなくなって一日で読んでしまった。

遠藤周作による、キリストの生涯を分析した小説。聖書やその他例えばマタイの福音書などで語り継がれる個々の書物を基に、実際にはどんな生涯を送ったのか、彼自身の視点で分析していて面白い。
特に、その時々の政治状況などバックグラウンドを交えて解釈しているので、語られる"奇跡"の物語がどういう状況で生まれたのかなど、興味深かった。
自分のスタンスとしては、奇跡はあり得ないしキリスト教を信じることもないけども、ここまで広まっているこの宗教がどういうものなのか、その辺りを知ることが出来て面白かった。"愛の神"ベースは賛同出来るのだけど、キリストの偶像崇拝に近い現状、それを宗教にする必要性は理解出来ない、という自分の中での結論。
それにしても、遠藤周作にはハマった。この人は語り口がうまいし、まとめ方が自分に合う。世代のせいか少し暗めだけど。
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遠藤周作をふと図書館で手にして読み始めた。昭和56~60年の短編集で、この作家を"試食"したくて読んだ初めての彼の作品だけども、面白い。突出してすごいところがある訳ではないけど、そこ力を感じさせられるさすがベテラン作家だなと。
バイオグラフを観ると、巻頭の短編「人生」の大連の話などは、たぶんに自分の経験を書いたものっぽい。くぐっと面白くて良い出会いだった。この作家は他にも読んでみたい。
(残念な事に、この本はもう絶版の様子…)
「模倣犯」、宮部みゆき
800ページくらいありそうな活字量だったが、宮部さんの長編としてはそこまで内容的にこれまでの作品より複雑な話だった印象ではなかった。面白かったけど、読後に浸るものは「レベル7」の衝撃ほどではなかった。
むしろ、事件にまつわるディティールにこだわってある印象で、社会問題提起が目的ではないかという印象だった。
「私たちが好きだったこと」、宮本輝
残念、古い。テーマは面白いかもしれないけど、人の動き方が「ありえな~い」感じで感情移入出来なかった。ぽんぽんえちーするし。後半から、喪失感がいい感じで描かれていて、トータルは良いけど、読み始めてすぐの展開が急なのが残念。